2010年11月6日土曜日

薬物代謝について ①

薬物代謝について、勉強したことをまとめてみました。
 

          薬物代謝とCYP

1)薬物代謝とは?

酵素などによって薬物が化学変化を受けることを
薬物代謝という。

薬物代謝に関わる酵素群は主に肝臓に分布。
(ただし経口投与時には、消化管における代謝の影響が無視できない。)

第I相反応  酸化・還元・加水分解
  ⇩   酵素 P450 (Cytochrome P450, CYP)*
第Ⅱ相反応  グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合
      
(薬物によっては最初から第Ⅱ相反応をうけることもあるが)
     第Ⅰ相反応をうけ、それでも脂溶性が高い場合
      第Ⅱ相反応を受ける。
           ⇩
      これにより、水溶性が上がり、組織移行性が低下し、
      尿中に排出されやすくなる。


2)シトクロームP450について

シトクロームP450は、細胞のミクロソーム画分(主に小胞体膜)





に存在し、多くの薬物の酸化代謝に関与する薬物代謝酵素群がある。


この酵素群の還元型が一酸化炭素と結合して450nm付近に

吸収極大を認め、赤く発色したので、1962年、大村恒雄と佐藤了により、

色素pigment の頭文字Pと極大波長 450nmから、

シトクローム色素450またはシトクロームP450と名付けられた。



CYPはアミノ酸配列が類似した複数の酵素群からなり、

それぞれの酵素は分子種と呼ばれ、


CYPを介した薬物代謝の多くは、

代表的な5つの分子種


CYP3A4 * CYP1A2*CYP2C9*CYP2C19 *CYP2D6


特にCYP 3A4は4割の薬物代謝を担っている。



   3       A           4

 ファミリー・サブファミリー・サブタイプを表す。



2)主な CYP分子種とその気質となる代表的な薬



CYP分子種 代表的な薬物
_____________________________________________________________


CYP1A2  テオフィリン・カフェイン・オランザピン
______________________________________________________________



CYP2C9   フェニトイン・ワルファリン・ピロキシカム
______________________________________________________________


CYP2C19   オメプラゾール・ジアゼパム
_______________________________________________________________


CYP2D6    デキストロメトルファン・


      アミトリプチン


       メトプロロール・コデイン
_______________________________________________________________



CYP3A4  シクロスポリン・タクロリムス・


      エリスロマイシン


      ニフェンジピン・インジナビル

________________________________


詳しくはこちらをご参照くださいね。 ↓



http://www.apha.jp/top/shiryou/sougou/CYP.htm


肝代謝の薬物動態には個人差があることが知られています。

CYP分種では遺伝子変異のため酵素活性が低下していたり

欠損することあり。

PM  poor metabolizer   酵素活性ない人

EM extensive metabolizer 酵素活性ある人


PM はEMの人に比べて 薬物の血中濃度が上昇し、半減期が延長。

薬物作用の増強をきたす。

また、代謝物が薬効を示す薬の場合は、効果がえられないこともある。



☆ イトラコナゾール(アゾール系抗真菌薬 イトリゾール)  CYP3A4

☆ キニジン (鈎不正脈薬 硫酸キニジン) CYP2D6

☆ シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 テルネリン) CYP1A2



3)CYPが関与する薬物相互作用について


薬物相互作用のうち、

代謝過程で生じる相互作用は全体の4割。

そのうち90%以上はCYPの阻害や誘導が関係した相互作用である。

      CYP1A2を阻害する薬物

_________________________________

・抗不整脈剤(アミオダロン・メキシレチン・プロパフェノン)


・H2遮断薬のシメチジン


・ニューキノロン系抗生物質(エノキサシン・シプロフロキサシン

               ・ノルフロキサシン)

・経口避妊薬


・抗凝血薬のチクロピジン

・SSRIのフルボキサミン



①チザニジンと、フルボキサミン・シプロフロキサシンは併用禁忌


(解説)


チザニジン(筋弛緩薬テルネリン)はCYP1A2で主に代謝される薬物であり、


フルボキサミン(SSRIのデプロメール・ルボックス)、

シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 シプロキサンなど)は

強力なCYP1A2阻害剤であることから、

チザニジンのCYP1A2 による代謝を阻害するため、

チザニジンの血中濃度が顕著に上昇するため。



②エリスロシン フラノクマリン類(グレープフルーツ)は、

  CYP 3A4を不可逆的に阻害する。


[ 要因 ]


☆ マクロライド系抗菌薬であるステアリン酸エリスロマイシン(エリスロシン)はCYP3A4と結合し、複合体を形成しCYP3A4の阻害作用がある。


このようにCYPの活性中心であるヘム鉄と不可逆的に結合し

 複合体を形成する代謝酵素の阻害様式は 

Mechanism-Based Inhibition (MBI)と呼ばれている。


MBIによる薬物相互作用では、

可逆的な代謝酵素の阻害(競合阻害)とは異なり、

阻害薬が血中や臓器・組織中から、消失した後まで阻害効果が続くため、

臨床上、重要な薬物相互作用ということになる。

それゆえ、エリスロシンと

エルゴタミン(酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン)の含有製剤

カフェルゴット・クリアミン・クト・ジヒデルゴットなど、

との併用禁忌となる。


また、ピモジド(オーラップ)とエリシロシンとの併用は、

ピモジドの血中濃度上昇により、QT延長、心室性不整脈などが、

報告されており、併用禁忌となっている。



☆グレープフルーツに含まれる成分(フラノクマリン類が)

  CYP3A4 を阻害し、初回通過効果を減弱させるため。


また、グレープフルーツジュースを常飲している場合、

飲用中止後その阻害作用は 3日続くことも報告されている。


それゆえ、カルシウム拮抗薬である バイミカードなど

(ニソルジピン)の血中濃度が著しく上昇する。


☆また、フルボキサミン(SSRIのデプロメールやルボックス)は

  CYP2D6を不可逆的に阻害する。



③ 薬物や嗜好品の摂取などにより、

   CYPの含量が増加し、代謝活性増大することもある。

 

 リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・

 セイヨウオトギリソウは、CYP3A4を誘導する。


④ 喫煙がCYP1A2を誘導する。


喫煙はCYP1A2を誘導し(CYP1A2の発現量を増やすため)

CYP1A2を介した薬物代謝を促進させることで相互作用を起こす。

なので、急な禁煙により、

CYP1A2で代謝される薬物を服用中の患者は、

血中濃度が喫煙時より、上昇することも考えられるため、

注意が必要です。


また、フルボキサミン(ルボックス、デプロメールなどのSSRI)の

代謝は、主にCYP2D6 が関与しているが、


 一部CYP1A2でも代謝され、


また、フルボキサミン自身もCYP1A2を強力に阻害することにより、

フルボキサミンも、喫煙・禁煙によって血中濃度が左右されると

考えられるており、いくつかの報告もあります。

    

    もう一度まとめると


喫煙 ⇒CYP1A2の活性化上昇

       ⇒ CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度下がる


禁煙 ⇒CYP1A2の活性化が低下

       ⇒CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度上昇


よって、禁煙により、

    CYP1A2で代謝される薬物の減量が必要になる。




         以上、簡単ではありますが、

シトクロームP450の薬物代謝についてまとめてみました。



[ 参考文献  ]  


☆ 東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座資料



3 件のコメント:

  1. 自分はピロリ菌除菌がオメプラール、タケプロンで失敗する人たちはジアゼパムが早く代謝される人々なんじゃないかという仮定でもって、たまたま内視鏡の時ジアゼパムを使うし、その寝具合を記録してあるものだから相関があるかどうか見ようと思ってるんだけども。
    いろいろ面白いですよね。

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  2. ちなみに
    http://blog.ukawaiin.com/2008/04/blog-post_25.html
    の記事なんですけど。

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  3. くう先生、コメントありがとうございます。

    先生のブログ拝見してきました。

    私は、まだまだ勉強中で詳しいことはわかりませんが、
    おそらく、先生の仮説は正しいのではないかと
    思います。
    CYP2C19のPMの方は、ジアゼパム(セルシン)等の
    代謝が遅く、睡眠作用の効きがいいのでしょうね。
    そして、ピロリ菌除菌がオメプラール、
    タケプロンの効きも良い。

    で、その逆に ジアゼパムの効きの悪い人は、
    何らかの要因でCYP2C19の活性が上昇し、
    そういう方は、オメプラール、タケプロンの効きが悪く
    除菌に影響が出るということですね。

    先生、たくさんの症例をお持ちですので、
    この相関性を是非、論文になさってください!!

    また武田薬品・アストラゼネカに報告なされば、
    製薬会社での検討がなされるのではないでしょうか。

    薬物相互作用のうち、
    代謝過程で生じる相互作用は全体の4割、そしてそのうちの90%がCYP阻害や誘導に関わるということなので、
    多くの現場での症例や事例報告により、
    さまざまな検討がなされるべき問題でしょうね。

    大変良い勉強になりました。
    ありがとうございました。☆

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