2010年11月13日土曜日

『World Diabetes Day 』

11月14日は、「世界糖尿病DAY」です。

私は今、糖尿病の研究のお手伝いをしていますので、

まだあまり日本では認知されていない、

「世界糖尿病DAY」について、書きたいと思います。

現在世界中で糖尿病の患者は 世界の成人人口の約5~6%であり

2025年には3億8, 000万人(2007年より64.7%増)に達すると予想されています。

糖尿病は初期には症状はなく、静かに進行し、

網膜症による失明、各種神経障害による下肢の壊疽、

腎障害による腎不全などの 致命的な合併症を起こす恐ろしい病気です。

現在 世界で10秒に1人が 糖尿病で死亡しているといわれています。

しかし、糖尿病は、早期発見、早期治療により、 健全な生活を確保し、

合併症を防ぐことができます。

詳しくはこちら↓を見て下さいね。

http://www.wddj.jp/index.html

世界中で一環となって、

インスリンを発見しノーベル生理学・医学賞を受賞した

フレデリック・バンティングの誕生日

11月14日を 「世界糖尿病DAY」と定めたそうですよ。

そして、世界各地で「糖尿病脅威啓蒙」のため、 イベントを開催します。

シンボルマークは 青い○

それにちなんで、こんなブルーのライトアップが 世界各地でされています

日本でも東京タワー・横浜マリンタワー・ 名古屋城・長崎の眼鏡橋etc…

関西では、大阪城・通天閣 ・海遊館

京都の東寺五重の塔・京都タワー・二条城

神戸ポートタワー・明石海峡大橋などが

ブルーのライトアップをしますよ。

その付近にお出かけの方は、

明日の夜、ライトアップにご注目くださいね。☆

各地のライトアップの詳細はこちら ↓です。

http://www.wddj.jp/05_j_light_list.html

2010年11月8日月曜日

正倉院展2010年

11月11日に閉会間近い「正倉院展」に、
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2010toku/shosoin/shosoin_index.html

なんとか滑り込み?と言う感じで、行くことができましたぁ。(^^)

今年は遷都1300年ということで、
平日の午前中というのに、入場までに長蛇の列。(約30分待ちました。)

19年ぶりに出展されたこのポスターの ↑
螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)。
それはそれは、みごとな細工がほどこされ、神々しいほどでした。

  これが表面です。 ↓ (これは ポストカードより 撮影)



  裏面は一面に文様が施され、ため息が出るほど美しかったですよ。
  そして、この五絃琵琶の復元音声も聴くことができました。☆
  古の奈良時代にタイムスリップ!!

さて、次は、
もうひとつ、薬剤師として私の興味があったのは、
光明皇后が薬を大仏に献納した際の目録『種々薬帳 しゅじゅやくちょう』です。

                     


 ここは撮影禁止と言われなかったので、撮影してしまったのですが。。。



      ちゃんと、藤原仲麻呂のサイン?まであります。
    この藤原仲麻呂は光明皇后の甥にあたる権力者で恵美押勝とも呼ばれ、
後に「恵美押勝の乱」を起こした人物ですね。
さて [ 種々薬帳 ]しゅじゅやくちょう』に話を戻します。

聖武天皇の病治癒のため集められた60種類の薬の数々が記載されています。
巻末には光明皇后自ら
「病に苦しむひとのために用いるように」と書かれています
さすがに「施薬院」だとか「悲田院」を設けたといわれている光明皇后の
慈愛に満ちたお人柄が偲ばれますね。

『種々薬帳』に収載されている生薬のなかで
そのうち、正倉院に現存しているのは40種類だそうです。

『種々薬帳』に記載されている品目は、
大黄、人参,甘草といった私たちになじみのある生薬
現在も漢方薬として用いられているものも多くありますが、

その中に今回、実物も出展されいた「冶葛 やかつ」は、
全草にアルカロイド系の猛毒を含み、とくに若葉は毒性が強く、
その葉3枚で致死量となるといわれています。

なぜ『種々薬帳』の中にこのような猛毒を持つ
「冶葛 やかつ」も含まれていたのでしょうか?

政権争いの中で、聖武天皇の妾腹の子であった
「安積親王 あさかしんのう」の暗殺や、
「長屋王の変」で、長屋王の家族もろとも自害に追い込まれたという
歴史的事実を考えると、この「冶葛」が何らかの形で用いられたとも
推測されるのではないでしょうか?

とにかく、この『種々薬帳』には、
さまざまな愛憎の記録が刻まれていると考えると、
時の権力者の悲哀も垣間見えるのが興味深いです。
その他の宝物は。。。美しい形の鏡など、71点の至宝が展示されており、
天平の時代に想いをはせることができて、大満足でした。
(はぁ~やっぱり 歴史ある奈良はいいですね~~)☆


で、最後に お決まりの鹿さんたちです。(^^)

[ 参考文献 ]

☆ 読売新聞 10月特別号 「正倉院展」

☆YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/shosoin/

☆ 「 正倉院薬物の世界 」 鳥越泰義 著 (平凡社新書)
























2010年11月6日土曜日

薬物代謝について ①

薬物代謝について、勉強したことをまとめてみました。
 

          薬物代謝とCYP

1)薬物代謝とは?

酵素などによって薬物が化学変化を受けることを
薬物代謝という。

薬物代謝に関わる酵素群は主に肝臓に分布。
(ただし経口投与時には、消化管における代謝の影響が無視できない。)

第I相反応  酸化・還元・加水分解
  ⇩   酵素 P450 (Cytochrome P450, CYP)*
第Ⅱ相反応  グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合
      
(薬物によっては最初から第Ⅱ相反応をうけることもあるが)
     第Ⅰ相反応をうけ、それでも脂溶性が高い場合
      第Ⅱ相反応を受ける。
           ⇩
      これにより、水溶性が上がり、組織移行性が低下し、
      尿中に排出されやすくなる。


2)シトクロームP450について

シトクロームP450は、細胞のミクロソーム画分(主に小胞体膜)





に存在し、多くの薬物の酸化代謝に関与する薬物代謝酵素群がある。


この酵素群の還元型が一酸化炭素と結合して450nm付近に

吸収極大を認め、赤く発色したので、1962年、大村恒雄と佐藤了により、

色素pigment の頭文字Pと極大波長 450nmから、

シトクローム色素450またはシトクロームP450と名付けられた。



CYPはアミノ酸配列が類似した複数の酵素群からなり、

それぞれの酵素は分子種と呼ばれ、


CYPを介した薬物代謝の多くは、

代表的な5つの分子種


CYP3A4 * CYP1A2*CYP2C9*CYP2C19 *CYP2D6


特にCYP 3A4は4割の薬物代謝を担っている。



   3       A           4

 ファミリーサブファミリーサブタイプを表す。



2)主な CYP分子種とその気質となる代表的な薬



CYP分子種 代表的な薬物
_____________________________________________________________


CYP1A2  テオフィリン・カフェイン・オランザピン
______________________________________________________________



CYP2C9   フェニトイン・ワルファリン・ピロキシカム
______________________________________________________________


CYP2C19   オメプラゾール・ジアゼパム
_______________________________________________________________


CYP2D6    デキストロメトルファン・


      アミトリプチン


       メトプロロール・コデイン
_______________________________________________________________



CYP3A4  シクロスポリン・タクロリムス・


      エリスロマイシン


      ニフェンジピン・インジナビル

________________________________


詳しくはこちらをご参照くださいね。 ↓



http://www.apha.jp/top/shiryou/sougou/CYP.htm


肝代謝の薬物動態には個人差があることが知られています。

CYP分種では遺伝子変異のため酵素活性が低下していたり

欠損することあり。

PM  poor metabolizer   酵素活性ない人

EM extensive metabolizer 酵素活性ある人


PM EMの人に比べて 薬物の血中濃度が上昇し、半減期が延長。

薬物作用の増強をきたす。

また、代謝物が薬効を示す薬の場合は、効果がえられないこともある。



イトラコナゾール(アゾール系抗真菌薬 イトリゾール)  CYP3A4

キニジン (鈎不正脈薬 硫酸キニジン) CYP2D6

シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 テルネリン) CYP1A2



3)CYPが関与する薬物相互作用について


物相互作用のうち、

代謝過程で生じる相互作用は全体の4割。

そのうち90%以上はCYPの阻害や誘導が関係した相互作用である。

      CYP1A2を阻害する薬物

_________________________________

抗不整脈剤(アミオダロン・メキシレチン・プロパフェノン)


H2遮断薬のシメチジン


・ニューキノロン系抗生物質(エノキサシン・シプロフロキサシン

               ・ノルフロキサシン)

経口避妊薬


抗凝血薬のチクロピジン

SSRIのフルボキサミン



チザニジンと、フルボキサミン・シプロフロキサシンは併用禁忌


(解説)


チザニジン(筋弛緩薬テルネリン)はCYP1A2で主に代謝される薬物であり、


フルボキサミン(SSRIのデプロメール・ルボックス)、

シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 シプロキサンなど)

強力なCYP1A2阻害剤であることから、

チザニジンのCYP1A2 による代謝を阻害するため、

チザニジンの血中濃度が顕著に上昇するため。



エリスロシン フラノクマリン類(グレープフルーツ)は、

  CYP 3A4不可逆的に阻害する。


[ 要因 ]


マクロライド系抗菌薬であるステアリン酸エリスロマイシン(エリスロシン)はCYP3A4と結合し、複合体を形成しCYP3A4の阻害作用がある。


このようにCYPの活性中心であるヘム鉄と不可逆的に結合し

 複合体を形成する代謝酵素の阻害様式は 

Mechanism-Based Inhibition (MBI)と呼ばれている。


MBIによる薬物相互作用では、

可逆的な代謝酵素の阻害(競合阻害)とは異なり、

阻害薬が血中や臓器・組織中から、消失した後まで阻害効果が続くため、

臨床上、重要な薬物相互作用ということになる。

それゆえ、エリスロシン

エルゴタミン(酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン)の含有製剤

カフェルゴット・クリアミン・クト・ジヒデルゴットなど、

との併用禁忌となる。


また、ピモジド(オーラップ)エリシロシンとの併用は、

ピモジドの血中濃度上昇により、QT延長、心室性不整脈などが、

報告されており、併用禁忌となっている。



☆グレープフルーツに含まれる成分(フラノクマリン類が)

  CYP3A4 を阻害し、初回通過効果を減弱させるため。


また、グレープフルーツジュースを常飲している場合、

飲用中止後その阻害作用は 3日続くことも報告されている。


それゆえ、カルシウム拮抗薬である バイミカードなど

(ニソルジピン)の血中濃度が著しく上昇する。


☆また、フルボキサミン(SSRIのデプロメールやルボックス)

  CYP2D6不可逆的に阻害する。



③ 薬物や嗜好品の摂取などにより、

   CYPの含量が増加し、代謝活性増大することもある。

 

 リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・

 セイヨウオトギリソウは、CYP3A4を誘導する。


④ 喫煙がCYP1A2を誘導する。


喫煙はCYP1A2を誘導し(CYP1A2の発現量を増やすため)

CYP1A2を介した薬物代謝を促進させることで相互作用を起こす。

なので、急な禁煙により、

CYP1A2で代謝される薬物を服用中の患者は、

血中濃度が喫煙時より、上昇することも考えられるため、

注意が必要です。


また、フルボキサミン(ルボックス、デプロメールなどのSSRI)

代謝は、主にCYP2D6 が関与しているが、


 一部CYP1A2でも代謝され、


また、フルボキサミン自身もCYP1A2を強力に阻害することにより、

フルボキサミンも、喫煙・禁煙によって血中濃度が左右されると

考えられるており、いくつかの報告もあります。

    

    もう一度まとめると


喫煙 ⇒CYP1A2の活性化上昇

       ⇒ CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度下がる


禁煙 ⇒CYP1A2の活性化が低下

       ⇒CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度上昇


よって、禁煙により、

    CYP1A2で代謝される薬物の減量が必要になる。




         以上、簡単ではありますが、

シトクロームP450の薬物代謝についてまとめてみました。



[ 参考文献  ]  


☆ 東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座資料



2010年9月25日土曜日

「人文科学の挑戦?」

久々のブログUpです。


今日は、大阪本町にある相愛大学で、
内田樹先生&中沢新一先生&釈徹宗先生トークセッションを拝聴してきました。

実学偏重の現代において
「人文科学の可能性」や「グローバル化する社会をどう生きるか」
「これからの日本人の在り方は?」「大阪と言う都市」について、
熱いトークが繰り広げられました。

平松大阪市長も少しだけ、参加されたようですが、
ご公務で?中途退席されたみたいで、
お目にかかれなかったのが残念でした。

さて、この「人文科学の挑戦」と銘打ったトークセッションですが、
日ごろTwitterでつぶやかれている内田樹先生でしたので、




すごく身近に感じられました。(とてもご機嫌なご様子でしたね。(笑))
私が今読み進めている「ダーウィンの危険な思想」にも指摘されているように
先生方も、
「人知において自然科学も人文科学も元はつながっているのであり、
思考の根源である人文学的手順がこれからの自然科学に活かされなければならない」と
熱く話されていました。
また中沢新一先生は仏教と量子力学の類似性について語られ



「数を縦横に配置した数学の行列」を意味する「マトリックス」は語源は、
「マトリー」という「母体」や「子宮」を意味するのものであり、
『異物を抱え込み痛みを引き受ける』また、「自己を守りつつ抗体反応を解除」することでもあり、それは量子力学に通じることであると語られていました。


また、内田先生はご自身の武道の心身統一法から得られた体験から、
「身体を使う」ということは、すなわち「時間をかける」ということに繋がり
それは、同じく「母性原理」に通じるものであり
『東洋的学び』とは「時間をかける」ことであり、根本的に西洋の学びと異なると
指摘されたことは興味深いお話でした。


次に、グローバル化する世界での「日本人の在り方」については
「人生2割がちょうどいい」
「『ガラパゴス』でいいじゃないか!」
と、
中沢先生とともに大いに盛り上がり、
「これからの日本は、先端的ガラパゴス国家でいいじゃないか」と言われたことは、
私にとって、ある意味「眼からうろこ」でした。


また意外だったのは、
「大阪アースダイバー」調査も展開されている
中沢新一先生が、大阪びいき?(大阪での講演を意識されて?)
のようにお話されていたのは、大阪人の私にとってうれしい発見でした。

「超高齢化社会」「少子化社会」を甘んじて受けて立つ
私にとっては、ちょっこし(笑)コペルニクス的転回というべき、
発想に、大いに未来への展望が開けた思いがしました。

また「大阪という都市」については、


首都圏にありがちな「いくらでも代わりはいる、代わりがある」といった、
出版界やメディア界でのいわゆる「使い捨て」「人間の消耗品扱い」
を、非難され、
ここ大阪の「弱点に寛容である精神」というか「ガラパゴスの生態系」になぞらえて、
このメンバーでやっていくしかしゃあない(しかたない)的な大阪は、
今後「ガラパゴス国家」の牽引力になりうるかもしれない可能性を示唆されました。(笑)

とにかく、今宵、論客が集ったトークセッションは
私に新たな視点を与えてくれました。

パネリストの先生方、お疲れ様でした。

有意義なお話を本当にありがとうございました。。。☆

  ☆ お写真はトークセッションのプログラムから撮影させていただきました。
  無断掲載お許しくださいませ。。。☆

[追記]

 このトークセッションの詳しい内容は、

10月17日の 朝日新聞 大阪版に掲載される予定だそうです。




2010年8月9日月曜日

アガサ・クリスティーは薬剤師だった??

今年は 生誕120年ということで、
ケーブルTV等ではいろいろと、
アガサ・クリスティー特集が組まれていますね。
学生時代、いろいろ彼女の作品読んでいましたが、
大人になって、色々な経験?を積んだ今、
改めて、アガサ・クリスティー作品を観ると新たな発見があったりして面白いのです。

彼女は1890年9月15日生まれの乙女座。
母親の教育方針で正式な学校には通いませんでしたが、
家庭教師等でそれ相応の教養は身に付けていた彼女。

1914年 アガサ24歳の時、
 第一次世界大戦中 英国航空隊のパイロットであった
アーチボルド・クリスティーと結婚。

新婚後まもなく、彼女は祖国のために少しでも役に立ちたいと
彼女は故郷トーキイにある病院の薬局で働いていたというのです。(@@)

( ↑ これは、第二次世界大戦中、ロンドンの病院の薬局で働いている
 アガサ・クリスティーの写真だそうですよ。)
その後2年間にわたり患者に渡す薬の調合の手伝いをしながら、
ロンドンの薬剤師の国家試験を受けるために熱心に薬の勉強をしていたのですって!!

彼女の自伝によると
「ときによると、ひとりで勤務についていて、午後はなにひとつすることがなく…
どんな探偵小説が書けるだろうかと、私は考え始めていた。
周りを毒薬で取り囲まれているのだから、死の方法として毒殺を選ぶのが、私としては
自然だろう」と。

確かに、病院薬局の業務は午後2時ごろまでは、地獄のように忙しいのですが、
その後は、入院患者さんの薬を投薬したり、
外来でよく出る薬の充填や予製をしたり、
薬の勉強会や調べ物をしたりして、比較的ゆっくり
(時には考え事をしながら?)仕事ができたりしちゃいます。(笑)

なので、クリステーはこういう時間に
いろいろな薬を使って人を殺害するという小説のネタを
あれこれ考えていたのですね~~。(笑)

クリスティーの処女作[スタイルズ荘の怪事件]を筆頭に
様々な毒薬による殺人事件を繰り広げられることになります。

薬物として、頻繁に用いられたのが


① 「青酸カリ」KCNや NACN

経口致死量は成人の場合でもわずか150~300mgなのです。
めまい、痙攣、呼吸困難、虚脱症状を招き致死量であれば15分程度で絶滅するとか。


「そして誰もいなくなった」「エジプト墳墓の謎」「終わりなき夜に生まれつく」
「ポケットにライ麦を」「動く指」などなと、多数の作品に使われている。


そして、


② モルヒネ。C17H19NO3
これは医療用に鎮静剤として用いられているが多量投与で呼吸停止をもたらす。
作品は、「親指のうずき」「杉の柩」「満潮に乗って」

それから



③ ジキタリスから抽出され強心剤として用いられるジギトキシン




過剰投与では、不整脈,頻脈,高度の徐脈などの循環器症状や
錯乱なのど神経症状が起こり痙攣、呼吸麻痺などにより死に至る。

作品は「死との約束」「運命の裏木戸」

そして
④ ストリキニーネ 



樹木マチン(インド原産のフジウツギ)の種子から得られるアルカロイドで
古くはマラリアの治療に用いられていました


漢方では「ホミカ」として苦味健胃薬として
また殺鼠剤として長く用いられています。

ストリキニーネは少量では中枢興奮作用を示し
大量投与では強直性痙攣を起こして死に至る。

作品は「謎のクィン氏」や「あなたの庭はどんな庭」など。


⑤ その他


ニコチン「三幕の殺人」


抱水クロラール「秘密機関」「複数の時計」


農薬「ビッグ4」
さらには 


蛇の毒液までも「雲をつかむ死」で使われているとか。


実際、クリスティーが薬剤師の資格を取得したかどうか?は定かではありませんが、

こんな薬剤師がいたら、ちょっと怖いかもです。(><)


ちなみに、アガサ・クリスティーの作品には、
三角関係に悩む主婦が、ご主人を殺害というお話もよく出てきますよね。

彼女の実生活では夫の浮気に悩まされ失踪事件を起こしたのち離婚をしています。
彼女の創作の源は、そんな悲しい事実が根底にあるのかもしれませんね。

しかし、その後。1930年彼女は40歳のとき、
14歳も年下の考古学者マックス・マローワンと再婚し、
晩年はおだやかな結婚生活だったと伝えられています。

さすが「考古学者」ですね。
彼は「年老いたもの」が、お好みだったようですものね。(*^^*)


[ 参考文献 ]
 
 ミステリ・ハンドブック「アガサ・クリスティー」
          原書房  ディック・ライリー
               パム・マカリスター 編
               森 英俊 訳

  (アガサ・クリステーの写真もすべて、上記の本より撮影。)

☆「雲をつかむ死」「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」「ホロー荘の殺人」
「オリエント急行殺人事件」「黄色いアイリス」 他 
  すべて アガサ・クリスティー著  ハヤカワ文庫
☆名探偵ポアロTVシリーズ
 「スタイルズ荘の怪事件」「杉の柩」「満潮に乗って」など参考。
☆ミス・マープル TVドラマシリーズ 「鏡は横にひびわれて」など。
☆ 映画 「クリスタル殺人事件」「ナイル殺人事件」
       「オリエント急行殺人事件」など。


ちなみにアガサ・クリスティーの作品で 名作と思うのは
「そして誰もいなくなった」や
「オリエント急行殺人事件」なのですが。

もうひとつ私が好きなのは「杉の柩」です。
これはモルヒネを使った殺人事件。
意外な犯人に名探偵ポアロが陥る窮地。

殺人容疑をかけられる、けなげな主人公 エリノアでしたが、
ポアロの明晰な頭脳によって無事に事件解決!
彼女を遠くから愛しながら見守ってくれていたロード医師と
最後は幸せをつかむ。。。
そんなロマンティクな展開になっていて、 私は好きなのですよ。

早川書房のこんな公式サイトもあります。
http://www.hayakawa-online.co.jp/christie/
ご参考にどうぞ・・・。

2010年7月30日金曜日

ちょっとだけ DI情報 その1☆ [パキシル] ☆

ちょっと薬剤師らしい記事を。(笑)
これは、私のYahooブログに以前書き綴っていたものですが。

私が今受けているセミナーで学んだことの忘備録として、
ブログに最新のDI (Drug Information : 薬の情報)を順次まとめることにしました。

今回 うつ病・パニック症候群・強迫性障害に 処方される、SSRI パキシルについてです。


パキシル 一般名 パロキセチン塩酸塩水和物
      販売されている錠剤(10mg /20mg)  (グラクソ・スミスクライン社)
        劇薬・処方箋医薬品
  
添付文書 ↓
(http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00046341.pdf#search='パキシル 錠')

SSRIとは(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)の略で、
日本語では選択的セロトニン取り込み阻害薬といいます。

 うつ病などは、現在、
脳内でセロトニンを放出するセロトニン神経の活性が著しく低下すると考えられています。

SSRIは、セロトニン神経において
セロトニンの再取り込みを司っている セロトニントランスポーターの働きを抑制し、
脳内セロトニン濃度を上昇させることで、
うつ病などの神経症状を改善する薬剤なのです。

「現在主に行われている処方」
[ うつ病、うつ状態 ]

通常1日1回夕食後 パロキセチンとして20~40mg を経口投与。
投与量は1回10~20mgより開始し、原則として一週ごとに10mg/日ずつ増量する。
ただし、1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。

[ パニック症候群 ]


通常成人には、1日1回夕食後 パロキセチンとして 30mgまで経口投与する。
投与量は1回10mgより開始し、原則として一週ごとに10mg/日ずつ増量する。
ただし、1日30mgを超えない範囲で適宜増減する。

[ 強迫性障害 ]
 


通常成人には、1日1回夕食後 パロキセチンとして 40mgまで経口投与する。
投与量は1回20mgより開始し、原則として一週ごとに10mg/日ずつ増量する。
ただし、1日50mgを超えない範囲で適宜増減する。



☆ パキシル投与で注意すべき事項 ☆


1 離脱症状 (Withdrawal Syndrome)

精神神経用剤などを長期使用していた患者がその使用を急に中止したり、
投与量を減量した際にみられる、精神及び身体的諸症状。

  不安・焦燥・不眠などが一般的。

  [パキシル減量法]
  現在の投与量をAとすると。
1/2A 2 週間 ⇒ 1/4A 2 週間⇒ 退薬
  というような漸減投与法を用いる。

2 若年者の自殺リスク増大

  パキシルでは18歳未満の患者(大うつ病性障害患者)への投与に関して、
   警告が出ています。

  ☆海外で実施した7~18歳大うつ病性障害患者を対象とした、
   プラセボ対照臨床試験において、
   パキシルの有効性が確認できなかった。
   及び、自殺念慮、自殺企図が観察されました。

  ☆現在のところ、他のSSRIである ルボックス(フルボキサミンマレイン酸塩)
 SNRIである トレドミン(ミルナシプラン塩酸塩)では警告は出されていません。
 ただし、24歳以下の患者に対しては、
リスクとベネフィットを考慮して使用する必要あり。


3 バイアスピリンなどの抗血液凝固作用のある薬物との併用において、
  出血傾向の危険性が高まる。

 ( 理由 )
  セロトニンは血小板中にも存在し、血小板のセロトニン受容体を介して
  血小板凝集を促進しています。

☆  SSRIによる継続的なセロトニン再取り込み阻害は、
脳と同様、血小板においてもセロトニン受容体の受容体減少
ダウンレギュレーション*(down regulation)が起こると考えられるからです。


* down regulation とは。。。


受容体が比較的高濃度の受容体作用薬物(アゴニスト)にさらされた場合、
受容体の量自体が減少すること。
down regulationが起こると、薬物に対する反応性が低下する。

よって、 パロキセチンと止血・血液凝固を阻害する薬剤
非ステロイド性抗炎症剤NSAID( アスピリン)やワルファリン等
また、出血症状の報告がある薬剤(フェノチアジン系抗エイシン病剤・非定型抗精神病薬
三環系抗うつ薬)との併用においては、出血傾向が増強するおそれがあるので注意すること。

4 抗精神病薬との併用による悪性症候群**

** 悪性症候群とは。
  ある種の抗精神病薬によって ひきおこされる 無反応状態のこと。

 抗精神病薬の治療患者の最大 3%に治療開始から数週間以内に
筋肉のこわばり、高熱、心拍数の上昇、呼吸数増大、高血圧、こん睡などの症状が起こる。
まれに 腎臓の損傷や腎不全をひきおこす重篤な事態となる。

 (理由)
現時点では併用による作用発現機序は解明されていませんが、

ドパミン受容体遮断やドパミンとセロトニンの不均衡が原因だと考えられています。



5  血圧降下剤(ロプレソール 等)との相互作用

ロプレソール( メトプロロール酒石酸塩)とパキシルの併用で
重度の血圧低下を生じた症例報告がありました。


(理由)
パキシル(パロキセチン)がロプレソールの代謝に関わる CYP2D4を阻害すると
考えられるため。


しかも、この阻害はMBI ***(Mechanism-based Inactivation)による
不可逆酵素阻害である。

 通常の酵素阻害と異なり阻害剤が代謝酵素によって代謝され、その代謝物が酵素を
不可逆的に阻害する。


☆ また他のSSRI薬剤、デプロメール・ルボックスともに
CYP2D4に対して弱いながら阻害作用を示すため代替えとなっても注意が必要。


6  点眼薬 チモプトールとの併用による 全身作用の発現

なぜ?点眼液と?という疑問がありますが、
時として、目薬点眼後、鼻に抜けた薬液が胃や腸に入り、
吸収されて全身性の副作用を起こすことがあるのです。


チモプトール点眼液の成分 マレイン酸チモプトールは、
まれでありますが、β- 遮断薬としての全身作用が個人差はありますが、
出現することがあり、脈拍減少、肺機能低下を起こすことがあるのです。

このチモプトールもCYP2D4により代謝されることにより、
5で述べた パキシルのCYP2D4阻害作用により、
チモプトール点眼薬のβ- 遮断薬としての全身作用が起こる可能性があります



7 他の抗うつ薬から パキシルへの切り替えには注意を要する。

  特に、三環系抗うつ薬からSSRIへの切り替えに注意。

三環系うつ薬、トフラニール(イミプラミン)などは
副作用として、口渇・便秘・眼のかすみ・傾眠などが強く、
SSRIなどに変更の際、
三環系うつ薬を急に中止すると 悪心・神経過敏症状・不安・筋けいれんなどの離脱症状がおこる。

そのため三環系うつ薬漸減しながら パキシル投与という併用処置が
とられることにもなり、両剤の併用により
イミプラミンはSYP2D4により代謝される薬物なので、
上記5・6で述べた相互作用がおこる。


また、両剤併用により セロトニン症候群*4 が惹起されたとの報告もある。

  セロトニン症候群*4 とは。。。
セロトニンやドパミン系に作用する薬においてみられる重篤な副作用。
主に、精神状態の変化(錯乱・軽躁)・興奮・ミオクローヌス
深部腱反射亢進・発汗・悪寒・振戦・下痢・協調運動障害・発熱


 薬剤開始や増量後1日以内の早期に発症することが多い。

初期、前駆症状としては、
発熱・もうろう状態・発汗・体のこわばり・ふるえなど。


以上、簡単ではありますが、SSRIのパキシルについてまとめてみた次第です。

現在、軽度うつ病・パニック症候群・強迫性障害の第一選択薬として
頻用されている SSRIですが、
私たちは、医療従事者として、患者さんのさまざまな症状や副作用、
及び、併用薬のチエック等、注意しなければならない薬剤のひとつとなのです。

 
   参考文献

  ☆ 図解薬理学  越前宏俊 著 医学書院
  ☆ 日経DI薬局 これだけはチェック「患者インタビュー」虎の巻
           日経ドラッグインフォメーション編
            堀 美智子 監修 
              日経BP社

  ☆ 東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座
     育薬セミナー・Basic テキスト
      澤田康文 発行責任者