2010年11月13日土曜日

『World Diabetes Day 』

11月14日は、「世界糖尿病DAY」です。

私は今、糖尿病の研究のお手伝いをしていますので、

まだあまり日本では認知されていない、

「世界糖尿病DAY」について、書きたいと思います。

現在世界中で糖尿病の患者は 世界の成人人口の約5~6%であり

2025年には3億8, 000万人(2007年より64.7%増)に達すると予想されています。

糖尿病は初期には症状はなく、静かに進行し、

網膜症による失明、各種神経障害による下肢の壊疽、

腎障害による腎不全などの 致命的な合併症を起こす恐ろしい病気です。

現在 世界で10秒に1人が 糖尿病で死亡しているといわれています。

しかし、糖尿病は、早期発見、早期治療により、 健全な生活を確保し、

合併症を防ぐことができます。

詳しくはこちら↓を見て下さいね。

http://www.wddj.jp/index.html

世界中で一環となって、

インスリンを発見しノーベル生理学・医学賞を受賞した

フレデリック・バンティングの誕生日

11月14日を 「世界糖尿病DAY」と定めたそうですよ。

そして、世界各地で「糖尿病脅威啓蒙」のため、 イベントを開催します。

シンボルマークは 青い○

それにちなんで、こんなブルーのライトアップが 世界各地でされています

日本でも東京タワー・横浜マリンタワー・ 名古屋城・長崎の眼鏡橋etc…

関西では、大阪城・通天閣 ・海遊館

京都の東寺五重の塔・京都タワー・二条城

神戸ポートタワー・明石海峡大橋などが

ブルーのライトアップをしますよ。

その付近にお出かけの方は、

明日の夜、ライトアップにご注目くださいね。☆

各地のライトアップの詳細はこちら ↓です。

http://www.wddj.jp/05_j_light_list.html

2010年11月8日月曜日

正倉院展2010年

11月11日に閉会間近い「正倉院展」に、
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2010toku/shosoin/shosoin_index.html

なんとか滑り込み?と言う感じで、行くことができましたぁ。(^^)

今年は遷都1300年ということで、
平日の午前中というのに、入場までに長蛇の列。(約30分待ちました。)

19年ぶりに出展されたこのポスターの ↑
螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)。
それはそれは、みごとな細工がほどこされ、神々しいほどでした。

  これが表面です。 ↓ (これは ポストカードより 撮影)



  裏面は一面に文様が施され、ため息が出るほど美しかったですよ。
  そして、この五絃琵琶の復元音声も聴くことができました。☆
  古の奈良時代にタイムスリップ!!

さて、次は、
もうひとつ、薬剤師として私の興味があったのは、
光明皇后が薬を大仏に献納した際の目録『種々薬帳 しゅじゅやくちょう』です。

                     


 ここは撮影禁止と言われなかったので、撮影してしまったのですが。。。



      ちゃんと、藤原仲麻呂のサイン?まであります。
    この藤原仲麻呂は光明皇后の甥にあたる権力者で恵美押勝とも呼ばれ、
後に「恵美押勝の乱」を起こした人物ですね。
さて [ 種々薬帳 ]しゅじゅやくちょう』に話を戻します。

聖武天皇の病治癒のため集められた60種類の薬の数々が記載されています。
巻末には光明皇后自ら
「病に苦しむひとのために用いるように」と書かれています
さすがに「施薬院」だとか「悲田院」を設けたといわれている光明皇后の
慈愛に満ちたお人柄が偲ばれますね。

『種々薬帳』に収載されている生薬のなかで
そのうち、正倉院に現存しているのは40種類だそうです。

『種々薬帳』に記載されている品目は、
大黄、人参,甘草といった私たちになじみのある生薬
現在も漢方薬として用いられているものも多くありますが、

その中に今回、実物も出展されいた「冶葛 やかつ」は、
全草にアルカロイド系の猛毒を含み、とくに若葉は毒性が強く、
その葉3枚で致死量となるといわれています。

なぜ『種々薬帳』の中にこのような猛毒を持つ
「冶葛 やかつ」も含まれていたのでしょうか?

政権争いの中で、聖武天皇の妾腹の子であった
「安積親王 あさかしんのう」の暗殺や、
「長屋王の変」で、長屋王の家族もろとも自害に追い込まれたという
歴史的事実を考えると、この「冶葛」が何らかの形で用いられたとも
推測されるのではないでしょうか?

とにかく、この『種々薬帳』には、
さまざまな愛憎の記録が刻まれていると考えると、
時の権力者の悲哀も垣間見えるのが興味深いです。
その他の宝物は。。。美しい形の鏡など、71点の至宝が展示されており、
天平の時代に想いをはせることができて、大満足でした。
(はぁ~やっぱり 歴史ある奈良はいいですね~~)☆


で、最後に お決まりの鹿さんたちです。(^^)

[ 参考文献 ]

☆ 読売新聞 10月特別号 「正倉院展」

☆YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/shosoin/

☆ 「 正倉院薬物の世界 」 鳥越泰義 著 (平凡社新書)
























2010年11月6日土曜日

薬物代謝について ①

薬物代謝について、勉強したことをまとめてみました。
 

          薬物代謝とCYP

1)薬物代謝とは?

酵素などによって薬物が化学変化を受けることを
薬物代謝という。

薬物代謝に関わる酵素群は主に肝臓に分布。
(ただし経口投与時には、消化管における代謝の影響が無視できない。)

第I相反応  酸化・還元・加水分解
  ⇩   酵素 P450 (Cytochrome P450, CYP)*
第Ⅱ相反応  グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合
      
(薬物によっては最初から第Ⅱ相反応をうけることもあるが)
     第Ⅰ相反応をうけ、それでも脂溶性が高い場合
      第Ⅱ相反応を受ける。
           ⇩
      これにより、水溶性が上がり、組織移行性が低下し、
      尿中に排出されやすくなる。


2)シトクロームP450について

シトクロームP450は、細胞のミクロソーム画分(主に小胞体膜)





に存在し、多くの薬物の酸化代謝に関与する薬物代謝酵素群がある。


この酵素群の還元型が一酸化炭素と結合して450nm付近に

吸収極大を認め、赤く発色したので、1962年、大村恒雄と佐藤了により、

色素pigment の頭文字Pと極大波長 450nmから、

シトクローム色素450またはシトクロームP450と名付けられた。



CYPはアミノ酸配列が類似した複数の酵素群からなり、

それぞれの酵素は分子種と呼ばれ、


CYPを介した薬物代謝の多くは、

代表的な5つの分子種


CYP3A4 * CYP1A2*CYP2C9*CYP2C19 *CYP2D6


特にCYP 3A4は4割の薬物代謝を担っている。



   3       A           4

 ファミリーサブファミリーサブタイプを表す。



2)主な CYP分子種とその気質となる代表的な薬



CYP分子種 代表的な薬物
_____________________________________________________________


CYP1A2  テオフィリン・カフェイン・オランザピン
______________________________________________________________



CYP2C9   フェニトイン・ワルファリン・ピロキシカム
______________________________________________________________


CYP2C19   オメプラゾール・ジアゼパム
_______________________________________________________________


CYP2D6    デキストロメトルファン・


      アミトリプチン


       メトプロロール・コデイン
_______________________________________________________________



CYP3A4  シクロスポリン・タクロリムス・


      エリスロマイシン


      ニフェンジピン・インジナビル

________________________________


詳しくはこちらをご参照くださいね。 ↓



http://www.apha.jp/top/shiryou/sougou/CYP.htm


肝代謝の薬物動態には個人差があることが知られています。

CYP分種では遺伝子変異のため酵素活性が低下していたり

欠損することあり。

PM  poor metabolizer   酵素活性ない人

EM extensive metabolizer 酵素活性ある人


PM EMの人に比べて 薬物の血中濃度が上昇し、半減期が延長。

薬物作用の増強をきたす。

また、代謝物が薬効を示す薬の場合は、効果がえられないこともある。



イトラコナゾール(アゾール系抗真菌薬 イトリゾール)  CYP3A4

キニジン (鈎不正脈薬 硫酸キニジン) CYP2D6

シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 テルネリン) CYP1A2



3)CYPが関与する薬物相互作用について


物相互作用のうち、

代謝過程で生じる相互作用は全体の4割。

そのうち90%以上はCYPの阻害や誘導が関係した相互作用である。

      CYP1A2を阻害する薬物

_________________________________

抗不整脈剤(アミオダロン・メキシレチン・プロパフェノン)


H2遮断薬のシメチジン


・ニューキノロン系抗生物質(エノキサシン・シプロフロキサシン

               ・ノルフロキサシン)

経口避妊薬


抗凝血薬のチクロピジン

SSRIのフルボキサミン



チザニジンと、フルボキサミン・シプロフロキサシンは併用禁忌


(解説)


チザニジン(筋弛緩薬テルネリン)はCYP1A2で主に代謝される薬物であり、


フルボキサミン(SSRIのデプロメール・ルボックス)、

シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 シプロキサンなど)

強力なCYP1A2阻害剤であることから、

チザニジンのCYP1A2 による代謝を阻害するため、

チザニジンの血中濃度が顕著に上昇するため。



エリスロシン フラノクマリン類(グレープフルーツ)は、

  CYP 3A4不可逆的に阻害する。


[ 要因 ]


マクロライド系抗菌薬であるステアリン酸エリスロマイシン(エリスロシン)はCYP3A4と結合し、複合体を形成しCYP3A4の阻害作用がある。


このようにCYPの活性中心であるヘム鉄と不可逆的に結合し

 複合体を形成する代謝酵素の阻害様式は 

Mechanism-Based Inhibition (MBI)と呼ばれている。


MBIによる薬物相互作用では、

可逆的な代謝酵素の阻害(競合阻害)とは異なり、

阻害薬が血中や臓器・組織中から、消失した後まで阻害効果が続くため、

臨床上、重要な薬物相互作用ということになる。

それゆえ、エリスロシン

エルゴタミン(酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン)の含有製剤

カフェルゴット・クリアミン・クト・ジヒデルゴットなど、

との併用禁忌となる。


また、ピモジド(オーラップ)エリシロシンとの併用は、

ピモジドの血中濃度上昇により、QT延長、心室性不整脈などが、

報告されており、併用禁忌となっている。



☆グレープフルーツに含まれる成分(フラノクマリン類が)

  CYP3A4 を阻害し、初回通過効果を減弱させるため。


また、グレープフルーツジュースを常飲している場合、

飲用中止後その阻害作用は 3日続くことも報告されている。


それゆえ、カルシウム拮抗薬である バイミカードなど

(ニソルジピン)の血中濃度が著しく上昇する。


☆また、フルボキサミン(SSRIのデプロメールやルボックス)

  CYP2D6不可逆的に阻害する。



③ 薬物や嗜好品の摂取などにより、

   CYPの含量が増加し、代謝活性増大することもある。

 

 リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・

 セイヨウオトギリソウは、CYP3A4を誘導する。


④ 喫煙がCYP1A2を誘導する。


喫煙はCYP1A2を誘導し(CYP1A2の発現量を増やすため)

CYP1A2を介した薬物代謝を促進させることで相互作用を起こす。

なので、急な禁煙により、

CYP1A2で代謝される薬物を服用中の患者は、

血中濃度が喫煙時より、上昇することも考えられるため、

注意が必要です。


また、フルボキサミン(ルボックス、デプロメールなどのSSRI)

代謝は、主にCYP2D6 が関与しているが、


 一部CYP1A2でも代謝され、


また、フルボキサミン自身もCYP1A2を強力に阻害することにより、

フルボキサミンも、喫煙・禁煙によって血中濃度が左右されると

考えられるており、いくつかの報告もあります。

    

    もう一度まとめると


喫煙 ⇒CYP1A2の活性化上昇

       ⇒ CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度下がる


禁煙 ⇒CYP1A2の活性化が低下

       ⇒CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度上昇


よって、禁煙により、

    CYP1A2で代謝される薬物の減量が必要になる。




         以上、簡単ではありますが、

シトクロームP450の薬物代謝についてまとめてみました。



[ 参考文献  ]  


☆ 東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座資料