薬物代謝について、勉強したことをまとめてみました。
薬物代謝とCYP
1)薬物代謝とは?
酵素などによって薬物が化学変化を受けることを
薬物代謝という。
薬物代謝に関わる酵素群は主に肝臓に分布。
(ただし経口投与時には、消化管における代謝の影響が無視できない。)
第I相反応 酸化・還元・加水分解
⇩ 酵素 P450 (Cytochrome P450, CYP)*
第Ⅱ相反応 グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル抱合
(薬物によっては最初から第Ⅱ相反応をうけることもあるが)
第Ⅰ相反応をうけ、それでも脂溶性が高い場合
第Ⅱ相反応を受ける。
⇩
これにより、水溶性が上がり、組織移行性が低下し、
尿中に排出されやすくなる。
2)シトクロームP450について
シトクロームP450は、細胞のミクロソーム画分(主に小胞体膜)
に存在し、多くの薬物の酸化代謝に関与する薬物代謝酵素群がある。
この酵素群の還元型が一酸化炭素と結合して450nm付近に
吸収極大を認め、赤く発色したので、1962年、大村恒雄と佐藤了により、
色素pigment の頭文字Pと極大波長 450nmから、
シトクローム色素450またはシトクロームP450と名付けられた。
CYPはアミノ酸配列が類似した複数の酵素群からなり、
それぞれの酵素は分子種と呼ばれ、
CYPを介した薬物代謝の多くは、
代表的な5つの分子種
CYP3A4 * CYP1A2*CYP2C9*CYP2C19 *CYP2D6
特にCYP 3A4は4割の薬物代謝を担っている。
3 A 4
ファミリー・サブファミリー・サブタイプを表す。
2)主な CYP分子種とその気質となる代表的な薬
CYP分子種 代表的な薬物
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CYP1A2 テオフィリン・カフェイン・オランザピン
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CYP2C9 フェニトイン・ワルファリン・ピロキシカム
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CYP2C19 オメプラゾール・ジアゼパム
_______________________________________________________________
CYP2D6 デキストロメトルファン・
アミトリプチン
メトプロロール・コデイン
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CYP3A4 シクロスポリン・タクロリムス・
エリスロマイシン
ニフェンジピン・インジナビル
________________________________
詳しくはこちらをご参照くださいね。 ↓
http://www.apha.jp/top/shiryou/sougou/CYP.htm
肝代謝の薬物動態には個人差があることが知られています。
CYP分種では遺伝子変異のため酵素活性が低下していたり
欠損することあり。
PM poor metabolizer 酵素活性ない人
EM extensive metabolizer 酵素活性ある人
PM はEMの人に比べて 薬物の血中濃度が上昇し、半減期が延長。
薬物作用の増強をきたす。
また、代謝物が薬効を示す薬の場合は、効果がえられないこともある。
☆ イトラコナゾール(アゾール系抗真菌薬 イトリゾール) CYP3A4
☆ キニジン (鈎不正脈薬 硫酸キニジン) CYP2D6
☆ シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 テルネリン) CYP1A2
3)CYPが関与する薬物相互作用について
薬物相互作用のうち、
代謝過程で生じる相互作用は全体の4割。
そのうち90%以上はCYPの阻害や誘導が関係した相互作用である。
CYP1A2を阻害する薬物 _________________________________
・抗不整脈剤(アミオダロン・メキシレチン・プロパフェノン)
・H2遮断薬のシメチジン
・ニューキノロン系抗生物質(エノキサシン・シプロフロキサシン ・ノルフロキサシン) ・経口避妊薬
・抗凝血薬のチクロピジン ・SSRIのフルボキサミン |
①チザニジンと、フルボキサミン・シプロフロキサシンは併用禁忌
(解説)
チザニジン(筋弛緩薬テルネリン)はCYP1A2で主に代謝される薬物であり、
フルボキサミン(SSRIのデプロメール・ルボックス)、
シプロフロキサシン(ニューキノロン系抗生物質 シプロキサンなど)は
強力なCYP1A2阻害剤であることから、
チザニジンのCYP1A2 による代謝を阻害するため、
チザニジンの血中濃度が顕著に上昇するため。
②エリスロシン フラノクマリン類(グレープフルーツ)は、
CYP 3A4を不可逆的に阻害する。
[ 要因 ]
☆ マクロライド系抗菌薬であるステアリン酸エリスロマイシン(エリスロシン)はCYP3A4と結合し、複合体を形成しCYP3A4の阻害作用がある。
このようにCYPの活性中心であるヘム鉄と不可逆的に結合し
複合体を形成する代謝酵素の阻害様式は
Mechanism-Based Inhibition (MBI)と呼ばれている。
MBIによる薬物相互作用では、 可逆的な代謝酵素の阻害(競合阻害)とは異なり、 阻害薬が血中や臓器・組織中から、消失した後まで阻害効果が続くため、 臨床上、重要な薬物相互作用ということになる。
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それゆえ、エリスロシンと
エルゴタミン(酒石酸エルゴタミン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン)の含有製剤
カフェルゴット・クリアミン・クト・ジヒデルゴットなど、
との併用禁忌となる。
また、ピモジド(オーラップ)とエリシロシンとの併用は、
ピモジドの血中濃度上昇により、QT延長、心室性不整脈などが、
報告されており、併用禁忌となっている。
☆グレープフルーツに含まれる成分(フラノクマリン類が)
CYP3A4 を阻害し、初回通過効果を減弱させるため。
また、グレープフルーツジュースを常飲している場合、
飲用中止後その阻害作用は 3日続くことも報告されている。
それゆえ、カルシウム拮抗薬である バイミカードなど
(ニソルジピン)の血中濃度が著しく上昇する。
☆また、フルボキサミン(SSRIのデプロメールやルボックス)は
CYP2D6を不可逆的に阻害する。
③ 薬物や嗜好品の摂取などにより、
CYPの含量が増加し、代謝活性増大することもある。
リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・
セイヨウオトギリソウは、CYP3A4を誘導する。
④ 喫煙がCYP1A2を誘導する。
喫煙はCYP1A2を誘導し(CYP1A2の発現量を増やすため)
CYP1A2を介した薬物代謝を促進させることで相互作用を起こす。
なので、急な禁煙により、
CYP1A2で代謝される薬物を服用中の患者は、
血中濃度が喫煙時より、上昇することも考えられるため、
注意が必要です。
また、フルボキサミン(ルボックス、デプロメールなどのSSRI)の
代謝は、主にCYP2D6 が関与しているが、
一部CYP1A2でも代謝され、
また、フルボキサミン自身もCYP1A2を強力に阻害することにより、
フルボキサミンも、喫煙・禁煙によって血中濃度が左右されると
考えられるており、いくつかの報告もあります。
もう一度まとめると
喫煙 ⇒CYP1A2の活性化上昇 ⇒ CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度下がる
禁煙 ⇒CYP1A2の活性化が低下 ⇒CYP1A2で代謝される薬物の血中濃度上昇 |
よって、禁煙により、
CYP1A2で代謝される薬物の減量が必要になる。
以上、簡単ではありますが、
シトクロームP450の薬物代謝についてまとめてみました。
[ 参考文献 ]
☆ 東京大学大学院薬学系研究科 医薬品情報学講座資料